総則_定義等(空中線電力の定義)

一陸技 法規 空中線電力の定義に関する過去問

出典:第一級陸上無線技術士国家試験

今回は、空中線電力の定義に関する問題です。

空中線電力というと、単純に「アンテナから出る電力」と考えたくなりますが、法規ではもう少し細かく定義されています。

一陸技の法規では、尖頭電力平均電力搬送波電力規格電力の違いが問われます。言葉は似ていますが、見ている状態が違うので、ここは表現ごとに整理しておきましょう。

この問題で確認する法律・規則

今回の問題に関係するのは、電波法施行規則第2条です。

電波法施行規則第2条では、電波法で使われる用語の定義がまとめられています。空中線電力については、六十八から七十二にかけて、空中線電力、尖頭電力、平均電力、搬送波電力、規格電力が定義されています。

電波法施行規則 第2条(定義等)※一部抜粋

電波法に基づく命令の規定の解釈に関しては、別に規定するもののほか、次の定義に従うものとする。

六十八 「空中線電力」とは、せん頭電力、平均電力、搬送波電力又は規格電力をいう。
六十九 「せん頭電力」とは、通常の動作状態において、変調包絡線の最高せん頭における無線周波数一サイクルの間に送信機から空中線系の給電線に供給される平均の電力をいう。
七十 「平均電力」とは、通常の動作中の送信機から空中線系の給電線に供給される電力であって、変調において用いられる最低周波数の周期に比較して十分長い時間(通常、平均の電力が最大である約十分の一秒間)にわたって平均されたものをいう。
七十一 「搬送波電力」とは、変調のない状態における無線周波数一サイクルの間に送信機から空中線系の給電線に供給される平均の電力をいう。ただし、この定義は、パルス変調の発射には適用しない。
七十二 「規格電力」とは、終段真空管の使用状態における出力規格の値をいう。

試験で押さえたいポイント

結論からいうと、この問題で押さえたいポイントは次の4つです。

  • 空中線電力は、尖頭電力、平均電力、搬送波電力、規格電力の総称である
  • 尖頭電力は、最高尖頭における1サイクルの平均電力である
  • 平均電力は、通常約10分の1秒間で平均された電力である
  • 搬送波電力は、変調のない状態における平均の電力である

特に試験で狙われやすいのは、尖頭電力を瞬間最大値と間違えること平均電力の平均時間搬送波電力の「変調のない状態」です。

ここから、それぞれの電力を順番に整理していきます。

空中線電力の4つの定義を整理する

空中線電力

六十八 「空中線電力」とは、尖頭電力、平均電力、搬送波電力又は規格電力をいう。

まず押さえたいのは、空中線電力は1種類だけではないということです。

電波法施行規則では、空中線電力を尖頭電力、平均電力、搬送波電力、規格電力と定義しています。

つまり、試験で「空中線電力とは何か」と聞かれたときは、単にアンテナから出る電力というイメージだけでは足りません。どの電力のことを指しているのかを、問題文から見分ける必要があります。

尖頭電力

六十九 「尖頭電力」とは、通常の動作状態において、変調包絡線の最高尖頭における無線周波数一サイクルの間に送信機から空中線系の給電線に供給される平均の電力をいう。

尖頭電力で注意したいのは、最高尖頭そのものの瞬間最大値ではないという点です。

条文では、尖頭電力は「変調包絡線の最高尖頭における無線周波数1サイクルの間に供給される平均の電力」とされています。

少し難しく見えますが、ざっくり言うと、波形のいちばん高い部分を見るけれど、その瞬間値ではなく、1サイクル分の平均電力を見るということです。

変調包絡線と最高尖頭を波形で見ると、次の部分になります。

尖頭電力と変調包絡線のイメージ図

もし尖頭電力を単なる最大値としてしまうと、どんな変調波形でも最高尖頭の瞬間値だけを見ることになります。これでは、変調波の電力を正しく表しにくくなります。

そのため、試験対策としては、尖頭電力=最高尖頭における1サイクルの平均電力と覚えておきましょう。

平均電力

七十 「平均電力」とは、通常の動作中の送信機から空中線系の給電線に供給される電力であって、変調において用いられる最低周波数の周期に比較して十分長い時間(通常、平均の電力が最大である約十分の一秒間)にわたって平均されたものをいう。

平均電力で覚えたいキーワードは、最低周波数約10分の1秒間です。

条文では、変調に用いられる最低周波数の周期に比べて、十分長い時間で平均するとされています。通常は、平均の電力が最大である約10分の1秒間で平均します。

ここで「最低周波数」が出てくるのは、ゆっくり変化する信号まで含めて、十分に長い時間で平均する必要があるためです。

たとえば、長波の下限に近い30kHzでも周期は約0.033msです。これに対して、10分の1秒は100msです。100msは0.033msに比べて十分長い時間なので、平均電力を考える時間として使いやすい、というイメージです。

試験では、最低周波数約10分の1秒間が別の言葉に変えられることがあります。ここは数字とセットで覚えておきましょう。

搬送波電力

七十一 「搬送波電力」とは、変調のない状態における無線周波数一サイクルの間に送信機から空中線系の給電線に供給される平均の電力をいう。ただし、この定義は、パルス変調の発射には適用しない。

搬送波電力は、変調のない状態における平均の電力です。

変調のない状態とは、ざっくり言うと、情報を乗せていない搬送波だけを発射している状態です。

一方、通常の動作状態では、搬送波に音声やデータなどの信号が乗った変調波を発射します。

搬送波の電力といえば、当然、変調されていない搬送波だけの状態で考えます。そのため、搬送波電力は無変調状態における無線周波数1サイクルの平均電力です。

搬送波と変調波のイメージ図

試験では、搬送波電力の説明として、「変調のない状態」という表現が出てくるかを確認しましょう。

規格電力

七十二 「規格電力」とは、終段真空管の使用状態における出力規格の値をいう。

規格電力は、終段真空管の使用状態における出力規格の値です。

最近の無線機をイメージすると少しなじみにくい表現ですが、法規では定義として出てきます。ここは深追いしすぎず、規格電力=終段真空管の出力規格の値として押さえておきましょう。

ここでいう終段真空管は、昔の送信機で出力段に使われていた増幅素子です。現在の感覚でいうと、送信機のパワーアンプ部にある出力デバイスに近いイメージです。試験対策としては、規格電力=終段真空管の出力規格の値、と覚えておきましょう。

選択肢の見方

この問題では、空中線電力に関する定義の一部が問われています。

特に、尖頭電力、平均電力、搬送波電力は混同しやすいです。次の表で、正しい表現と間違えやすい表現を整理しておきましょう。

空中線電力尖頭電力、平均電力、搬送波電力又は規格電力
搬送波電力だけをいう×
尖頭電力最高尖頭における1サイクルの平均電力
波形の瞬間最大値×
平均電力最低周波数の周期に比べて十分長い時間で平均
最高周波数の周期を基準にする×
平均電力通常、平均の電力が最大である約10分の1秒間
約1秒間、または瞬間値×
搬送波電力変調のない状態における平均の電力
変調された状態における最大電力×

この問題の解き方

この問題は、搬送波電力の定義を知っていれば判断しやすいです。

搬送波電力は、変調のない状態における無線周波数1サイクルの間に供給される平均の電力です。

問題文の空欄は、次の形で考えるとよいです。

搬送波電力=無変調における____

搬送波だけを発射している状態で見る電力なので、変調された状態の最大値ではありません。ここは「変調のない状態」「平均の電力」をセットで覚えておきましょう。

答え

答えは「3」です。

搬送波電力は、変調のない状態における無線周波数1サイクルの間に、送信機から空中線系の給電線に供給される平均の電力をいいます。

覚えておきたいポイント

  • 空中線電力は、尖頭電力、平均電力、搬送波電力、規格電力の総称
  • 尖頭電力は、最高尖頭における1サイクルの平均電力
  • 尖頭電力は、波形の瞬間最大値ではない
  • 平均電力は、最低周波数の周期に比べて十分長い時間で平均する
  • 平均電力は、通常約10分の1秒間で平均する
  • 搬送波電力は、変調のない状態における平均の電力
  • 規格電力は、終段真空管の使用状態における出力規格の値

空中線電力の定義は、言葉だけを見ると難しく感じます。ただ、試験では狙われるポイントがある程度決まっています。まずは、尖頭電力=1サイクル平均平均電力=約10分の1秒間搬送波電力=無変調状態を押さえておきましょう。

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空中線電力の定義を押さえたら、次は空中線の利得や電波の形式の表示など、法規でよく出る基本用語も確認しておきましょう。

法規全体の出題分野を整理したい方は、一陸技 法規の内容と勉強ポイントも参考にしてください。