人工衛星局の条件

出典:第一級陸上無線技術士国家試験(平成30年1月)

人工衛星局に関する問題では2パターンの問題が出題されます。ここでは良く出るパターンについての問題を解説します。

人工衛星局とは人工衛星に搭載した無線局のことで、一般的には通信衛星と言われています。
宇宙空間に存在するので他国の通信にも影響を与えないように配慮しなければならないため特別な条件が電波法および電波法施行規則で決められています。

電波法 第36条2(人工衛星局の条件)

人工衛星局の無線設備は、遠隔操作により電波の発射を直ちに停止することのできるものでなければならない。

 人工衛星局は、その無線設備の設置場所を遠隔操作により変更することができるものでなければならない。ただし、総務省令で定める人工衛星局については、この限りでない。

電波法施行規則 第32条の4(人工衛星局の位置の維持)

対地静止衛星に開設する人工衛星局(実験試験局を除く。)であつて、固定地点の地球局相互間の無線通信の中継を行うものは、公称されている位置から経度の(±)〇・一度以内にその位置を維持することができるものでなければならない。

 対地静止衛星に開設する人工衛星局(一般公衆によって直接受信されるための無線電話、テレビジョン、データ伝送又はファクシミリによる無線通信業務を行うことを目的とするものに限る。)は、公称されている位置から緯度及び経度のそれぞれ(±)〇・一度以内にその位置を維持することができるものでなければならない。

 対地静止衛星に開設する人工衛星局であつて、前二項の人工衛星局以外のものは、公称されている位置から経度の(±)〇・五度以内にその位置を維持することができるものでなければならない。

電波法施行規則 第32条の5人工衛星局の設置場所変更機能の特例

法第三十六条の二第二項ただし書の総務省令で定める人工衛星局は、対地静止衛星に開設する人工衛星局以外の人工衛星局とする。

問題を解くには、無線以前に知っておかなければならない知識が2つあります。
1つは緯度と経度についてで、南北、東西どっちだっけ?って人はこの機会に覚えてしまってください。

  • 緯度:南北方向 赤道を0度として北極から南極まで90度に分けたもの
  • 経度:東西方向 子午線から東側と西側をそれぞれ180度に分けたもの

もう1つは、対地静止衛星についてです。
対地静止衛星とは地球上から見て常に同じ位置にとどまる軌道上に配置された人工衛星のことで、赤道上を地球の自転と同じ速度で回っています。大事なのは赤道上(=緯度0度)ってところで、赤道上からずれると静止衛星じゃなくなってしまいます。
つまり緯度は0度に維持する必要があり、±0.5度も大きく動かすことはできません。それなので設問に「緯度を±0.5度以内に維持しなければ」という文言がでてきたらその設問は誤った文章となります。

人工衛星の位置の範囲に注目、静止衛星は赤道上空を回る必要があるため

  • 緯度(南北方向)には動かせない(±0.1度まで)
  • 経度(東西方向)は自由度があるので±0.5度動かすことは可能

答え「3」